胸いっぱいに空気を吸い込む。何か懐かしい気がした。でも…。
「ここが私の家?」
時音には、全く実感が湧かなかった。
昨日まで暮らした白波の家を後にした今日、時音と雪斗はお父さんとタクシーに乗って以前まで住んでいたという家に帰ってきた。今、家中を見回ってきたが時音にとってはどれも初めて目にする光景だった。
「そっかー。姉ちゃんやっぱりダメだったんだね。」
「うん。」
時音は、申し訳ないような気がした。思い出そうと思っても、今の所全て失敗…。
「とりあえず座ろう。」
お父さんはリビングの椅子に座る。時音と雪斗もお父さんに向き合うように椅子に座った。
「そういえば雪斗は、1回家に帰ってるんだよな?」
「うん。家の植木鉢の下に鍵が隠してあるの知ってたから家に入れたんだよ。」
時音は、なぜ自分の服を雪斗が持っていたかの納得が出来た。だけど1つ気になる事があった。
「お父さんには会わなかったの?それに、何で鍵隠してあるの?」
「先月まで入院してたから会わなかったんだろうな。鍵は、よく無くすから予備であそこに。」
その会話が終わると、話題が無かったのと、照れ臭さと、恥ずかしさで話題が途切れてしまった。数分の沈黙を破ったのはお父さんだった。
「これから一緒に暮らしていくけど、予定とかルールとか決めておこうか。」