「本当にそれで良いのか?姉ちゃん?」
雪斗は、眉をひそめて時音の顔を覗いてきた。
「学校を辞めるなんて…。将来を棒に振るようなもんだぞ!前までの高校に行く方がマシだろ!」
お父さんは、本気で怒っているようだった。
「私は、記憶も夢も無いからお父さんの家で住んでバイトをして、そしたら記憶も夢も見つかるのかなって思ったの。ダメかな?」
時音は、2人の様子を伺った。しーんとした空気を破ったのは“かなたさん”だった。
「僕は時音がそうしたいのならそれで良いと思うんだ。雪斗お前自身はどうしたい?」
「僕は、前みたいに家族で幸せに暮らして行きたいと思ってる。」
「じゃあもう決まりじゃないか?結局、皆同じ思いなんだろう?皆、一緒に暮らしたいと思ってる。確かに前と全く同じ生活とは言えないだろうけど、家族ならきっとやっていけるよ。」
かなたさんのその一言で、この先どうするかが決まった。
「時音、雪斗また日曜日に迎えに来るから。」
お父さんは、玄関で靴を履くと扉を開け大雨の中に消えていった。
「本当に良かったのか?」
玄関に2人でっっ立ったまま、隣の雪斗は話しかけてきた。
「良いに決まってるでしょ。」
時音は、すぐさま答えた。
「だって、向こうには私の記憶があるかもしれないじゃん!」