今で黙っていた雪斗は、堰を切ったように話した。
「そのつもりだ。」
「じゃあ、姉ちゃんがまたいじめられても良いのか?」
時音は、その言葉にドキッとした。

私がいじめられていた?

頭の中がグルッと回る。自分がいじめられていたなど考えられなかったからだ。
「それは違う!ただ、幸せを取り戻したかっただけで…。」
お父さんは、黙ってしまった。
「普通女の子だったら、アメリカに引っ越すなんて言われたら何がなんでも嫌がるだろ。友達とか彼氏とかの事もあるから。でも、姉ちゃんははじめこそ驚いていたけどすんなり受け入れてた。秋くんだって居るのに。それぐらい追い詰められてたからじゃないの?」
時音は、その場の空気がどっと重くなるのをひしひしと感じていた。

家族と居る事で、何かを思い出すキッカケになるのかな?

そんな思いがふと心に浮かんだ。
「私、高校辞めてもいいから家族で暮らしたい。」
時音の口から言葉が滑り出た。