彩さんの後ろに続いて部屋に入るとお父さんと男の人がいた。
「時音、雪斗、ここに座りなさい。」
「うん」
時音と雪斗はお父さんの横のあけられたスペースに座った。目の前にはあの時出会った男の人が座っていた。
「こちらが、時音と雪斗のお父さんだ。僕の事をお父さんと呼んでいたけど、かなたと呼んでくれても良い。そこら辺はお前たちが決めなさい。」
かなたさんは、重たい口を開いた。時音は、自分のお父さんをまじまじと見つめた。
「その手…。」
時音は、絶句した。お父さんの左腕がなかったのだ。ゲームセンターであった時は、全然顔も見ていなかったから気付かなかった。
「お父さんが2人を育てていくのに自身が無かったのは、この腕のせいなんだ。でも、お母さんが亡くなって1人の家でふとあの頃の幸せを思い出した。そしたら、2人に会いたくてその気持ちがおさえられなくなった。時音、いきなり会いに行ったりしてごめんな。雪斗、寂しい思いさせてごめんな。何をいまさらと思うかもしれないが、一緒に暮らそう?」
お父さんは、涙を流しながら唇を固く閉じた。腕をなくしたのはあの事故のせいだと容易に理解できた。
「それ、身勝手過ぎるだろ。あんたが顔を出さなかったせいで、俺らがどれだけ苦しんだか分かるか!?それに!一緒に暮らそうって言ったって、前の家だろ?そしたら姉ちゃんまた苦しむじゃないか!どうせ、あの高校に通わせる気なんだろ?」