「ど、どうして?」

「今日はまだそんなに遅くないから。いつも運動らしい運動もしてないからたまにはいいかなって」

照れたようにはにかみながら言うセイラに胸の中がザワザワと音をたてる。

なんで急に……?いつもだったら絶対にタクシーで帰るっていうのに。

まさか、ハルトに送っていってもらおうとかしてる?

そういうこと……?

セイラってハルトのこと……。そんなのありえない。

絶対にありえない。

「神条の家はここから歩いて何分くらい?どのあたり?」

すると、ずっと黙っていたハルトが割って入った。

「えっと、10分ぐらいかな?駅沿いに歩いていったところ」

「真子は?」

「あたしは30分ぐらい」

「……そっか。あのさ、悪いんだけど今日はタクシーで帰れる?真子の家の方が距離あるし、真子の家の方向って街灯少ないし心配だから」

ハルトの言葉にセイラは動揺していたように感じた。

「あっ……そうだね。うん。その方が良いと思う。真子、清水君、また明日学校でね。バイバイ!」

「――ちょっ、セイラ?」

セイラは早口でまくし立てるように言うと、あたしとハルトに手を振って背中を向けて駆け出した。

セイラってば……

どうしてあんなに慌てて帰っちゃったんだろう。

違和感はどんどん大きくなる。

「――じゃあ、帰るか」

ハルトはそう言うと、自分の家とは反対側の方向に向かって歩き出した。