「なんでそんな驚いてんだよ」


「だって、わからないと思ってたから」



樹に当てられるわけないと思っているから。



「お前は?」


「え?」


「俺の好きなやつ」



考えても考えてもわかんない。
だいたいヒントだってあたしはバカだから今日の〝黒髪〟ってとこしか覚えてない。
ちくしょーメモに控えとけばよかった。



「わ、わかんない」


「だよな。だって覚えてるのはきっと黒髪くらいだろ」


「うっ…」



図星をつかれて何も言えなくなる。
ほんと樹はあたしのことを理解しすぎてる。
あたしは樹のこと理解してはいるけど、しすぎてはいないと思う。



「当てようか?好きなやつ」


「当てていいの?」


「は?」



当ててしまったら。
あたしと樹の関係が壊れるんじゃないかとあたしは怖い。



「当てて欲しくないの?」



当てて欲しくないし、本当は樹の好きな人だって当てたくない。知りたくない。