「和泉!」

和泉の後ろ姿を見つけ、声が裏返る。

「華菜、今度は何もしないだろうな?」

私、信じてもらえないんだ。悪いことをするつもりはないけど疑われる。仕方がない。

「和泉……本当は、大好き……!だから構ってほしくて……酷いことをした。ごめんなさい!」

こんな簡単な言葉で良かったんだ。どうしたら見てもらえるか悩んで、変なことに頭を使わなくて良かったんだ。

「ハッキリ、嫌いって言ってもいい。言われても仕方がないし……」

私は身構えた。和泉と同じくらい今から傷付くと思った。

「嫌いだったら泣くわけがない」

私の方に振り向いた和泉は泣いていた。

「好きな人が嫌なことをしてくるからこんなことになったんだぞ!」

「本当にごめんなさい」

泣いてるところなんて見せないのに……他の人は想像できないだろうなあ。

「構ってほしいなら普通に言ってくれ!当然、俺が呼んだ時もちゃんと来るな?」

「うん」

走っていくよ。
ずっと願っていたことが、ずっと隠していたことが現実になる。

「ハンカチ……体操服のポケットに入れっぱなしだった!」

「ほら、使いたまえ」

「ありがと……でも、明日は金曜日……洗ったら返すの月曜日になる」

「別にいい。家に着くまで泣くっていうのなら別だが……」

「家、芙蓉駅の近くだったよね?」

これで明日も会える。いや、普通に言えばいいのかもしれないけど……。

明日私は手布を返すため、最寄り駅で待っています。