私の名前は吾妻 華菜です。得意科目は英語と国語と社会です。好きな食べ物はケーキと玉ねぎです。苦手な食べ物は納豆です。

一年生の英語の授業で、私は完璧に言った。
発音はどうかわからないけど、多分大丈夫。自信を持った所が他の子と違う。このクラスの誰も、私のようには出来ない。

全員が驚き、教室は拍手が響く。
これで、私の立ち位置は決まった。

自分の席に戻り、足を組む。近くの席の子の凄いという言葉で機嫌がよくなった。

小学生の頃、私は熱中出来ることがなかった。
特技も無く、宿題が終わったらお菓子を食べて、漫画を読む。家に帰ったらそれの繰返しだった。退屈だった。

春休み、私はその退屈から抜け出そうとした。卒業式以降会わなくなる友達もいて、これで私は小学生じゃなくなった。卒業式の時、昔の自分を捨てられそうだと思った。

宿題も無いのに勉強している内に楽しくなっていた。何かに集中していると、嫌なことを忘れられる。いつの間にか時間が経っている。自分が成長したことを感じられる。

もう何もない私はいなかった。これからは出来る子として生きる。

次の子が緊張しながら英語で自己紹介する。
やっぱり私が一番だと確信した。

その後、愛鷹という珍しい名字の男子が自己紹介する。名前だけでなく顔もかっこいい。
これでボソボソと話されたら嫌だな……聞かなかったことにしようかなと思った。
けど……。

愛鷹は無駄に発音がよかった。しかも、低くて穏やかな声だった。
これは私以上に注目を集めた。まあ一番じゃなくてもいいや。

授業の後、愛鷹は私のところに来た。
この二人で注目を集めないわけがなかった。

「君、やるね。どこから来たんだ?」

座る私を見下ろして問う。ちょっと上から目線だ。いいけど。

「青葉小学校だよ。そっちこそ凄かったよ。これからよろしくね」

ここだけ空気が違う。仲良くしよう、という感じではない。
周りは少し離れて見ていた。

それ以上言葉を交わすことはなかった。
愛鷹か……面白いことになりそう。一度くらいは勝ちたいな。いや、一度じゃ満足出来ない。同格はよくても下は嫌だ。

私は家に帰ってすぐ予習した。目標が出来てよかった。これで、退屈から離れた。