「おかえり、明里」


三晩ぶりに家へ帰ると、祖父がマルコを抱いて迎えてくれた。
ニヤけてる顔が締まらないよ…と言いたくなるのを我慢して、ただいま…と返事をしてマルコを撫でた。


「どうだった?」


「何が?」


以前同じように会長に体の相性は…と聞かれたことを思い出して照れくさくなりそうだった。

でも、祖父は出掛けた場所のことを聞きたかったらしく、いい所だったかと訊ねてきた。


「いい町だったよ。小早川家に養子に入った人のお墓も参ったし、その墓所が凄く印象的で神秘的な場所だったの。

それから、月野という地名の場所があって、稲穂が生え揃った綺麗な田園が広がってた。
側には清流も流れてて、山の奥には滝もあるんだって。

そう言えばほら見て。泊まったホテルの支配人さんがくれた町内の民話を集めた本。
この本の中にお祖父ちゃんが話してくれたことも載ってたよ。

滝に残る民話もあるって聞いたから読む?」


矢継ぎ早に喋って照れ臭さを隠そうとした。
祖父は読みたくても目が霞むと残念がり、私に読んで聞かせてて欲しいと願った。