襲われなかった?と悪戯っぽく聞く。
ポカンとしたまま横顔を見つめ、いいえ…と答えながら、この人が?と不思議に思った。


「梶さん、此処で喋ってないで仕事しろよ。店長だろ」


厳しい声でそう言う彼に肩を竦め、梶野さんは「はいはい」と言いながら立ち上がる。


「今夜はカッちゃんからウーロン茶で、と頼まれたからそうしたよ。もしもお酒を飲みたくなったら、彼に水割りでも作って貰って」


ボトルキープをしてるウイスキーの瓶を指差しながら言われ、コクン…頷くとチャーミングな笑みを返された。

ごゆっくり…と言って逃げてく。その姿に会釈した。


パタン…とドアが閉まると急にシ…ンとしたようで言葉に詰まる。
聞き出したいことや話してしまいたい事は沢山あるのに、何処から切り出せばいいのか分からず悩んだ。


モジモジしてる私の横で、彼は慣れた手つきでロックを作る。
意外にお酒が強そうだな…と眺めてると、こっちを振り向いたからビクッとした。


「飲むか?薄い水割りなら作るぞ」


「別に薄くなくても平気だけど」