その時の母の目は完全に常軌を逸していて、あたしが逆らえば人も殺しそうな勢いだった。

だからあたしが怜也と関わらない事を誓ったのは、その目に気圧されてしまったからでしかない。

でも、理由はどうあれ誓ったのはあたしだし、その時の自分の選択を間違っていなかったと思う。

我が身を守るためそうせざるを得なかったし、もしあそこで誓わなければ、母はほぼ間違いなく怜也に危害を加えただろうから。

そう、あの時の母はあたしが逆らえば人も殺しそうな勢いだった。
そしてあたしが逆らった場合その矛先が向けられるのは、あたしと…怜也。

誓った事を守らなければ、また同じ事になる。

だから…

溢れそうになった涙を堪え、あたしは厳しい表情を作ると怜也の手を振り払った。

「何言ってんの?これがあたしの本心だよ。勝手に決めつけないでよ、あたしの事なんて何もわかってない癖に」

突き放すように言ったその言葉のどこが怜也の逆鱗に触れたのかはわからない。