『あなたも父親なら
娘に便乗していないで
諦めることも教えたらどうなんだ?』

我が儘にも限度がある。

ましてや、侑君は“物”じゃない。

返事をしない瑞原父子に
侑君は更に声のトーンを下げて睨んでいる。

延々と続きそんな侑君の
毒舌トークを止めなきゃな。

『侑君、
何時も言ってるけど
あたしは気にしちゃいないから』

雪花を追い出された時も
雪花に捕まった時も
瑞原さんに“何であんたなの”
と言われた時も全部気にしちゃいない。

『よかったな由々波、
茉緒さんに止められたから
此処までにしといてやるよ』

瑞原さんは
悔しそな表情(かお)をした。

そう言えば、瑞原さんの母親は
あれ以来話さないな。

「瑠花、わたしだけに言わせるつもり?」

状況からして瑞原さんの
母親のことだよね?

『瑠花さんも何かあるんですか?』

口調が戻ってる(笑)

侑君も疑問に思ったらしい。

「わかったわ、
白状するとわたしは雪花の元姫で
由々波達の担任と付き合ってたのよ」

瑞原父子は母親の告白に驚いている。

話についてこれていなかったのは
“三人”だったわけか。

「茉緒は姫だけど
喧嘩するって言ってたでしょう?

瑠花も姫だったけど強かったのよ」

それは凄い‼

『お二人に喧嘩を教わりたいです(笑)』

すっかり、置いてきぼりの三人。

「家庭に入って随分経つから
腕が鈍ってそうだけれど
いいわ、今度雨竜の倉庫に
行った時に教えてあげる」

柚紀さんが了承してくれた。

『ありがとございます*♬೨

侑君に中々勝てなくて
ちょっと悔しかったんですよ』

連陏も理事長から聞いたらしいけど
柚紀さんはとても喧嘩が強く
仲間思いの人だったらしい。

「柚紀だけ狡いわ。
わたしも雨竜の倉庫に行っていいかしら?」

『勿論ですけど、バイクどうしましょう?

私は茉緒を乗せるのでお二人を
倉庫に連れていく手段が……』

それもそうだ。

車で行くと目立つしな……

「侑司、気付いてなかったの?

車庫の奥にもう一台バイクがあるの」

考え込んだ後、何かを
思い立ったらしい侑君は
“あっ”という表情(かお)をした。

『もしかして、たまに車庫から
戻って来るのが遅い時が
ありますけどバイクのメンテしてたんですか?』

「そうよ、だから
瑠花はわたしが乗せてくわ」

これで解決したな。

『では瑠花さんは
母さんのバイクで来てください』

完全に三人を忘れて
予定をたてていくあたし達。

『あの、あたしも
〈瑠花さん〉っ呼んでいいですか?』

侑君は幼なじみの母親だから
昔からそう呼んでるんだろうけど
あたしは初対面だ。

「勿論よ*♬೨

わたしも“茉緒”って呼んでいいかしら?

それから侑司君、
由々波との婚約は解消でオッケイよ」

よかった。

侑君もホッとした表情(かお)をしていた。

『是非、そう呼んで
頂けたら嬉しいです』

三人が呆けている間に
予定が決まって行き、
あたし達は帰ることにした。

『母さん・瑠花さん
私達はそろそろ帰りますね』

「気を付けてね」

『また、連絡します』

柚紀さんと瑠花さんに
お辞儀をして、侑君の実家を出た。