「では、手術方法を説明します」
まず、損傷した部分の神経を修復させます。
健全な部分から神経細胞を貰って移植するので安心してください。
「そこで、ひとつ大きな問題が見つかりました」
「え?」
「この手術で、記憶を失うことはほぼ確実と言っていいでしょう」
それは前に聞いた。
覚悟はできている。
「詳しく見た結果、下半身に信号を伝える神経にも損傷があることが分かりました そこは修復しようにも、私たちの技術ではどうしようもありません」
「それって、そのままじゃダメなんですか…?」
先生は考え込むような仕草を見せる。
しかし、すぐに私たちに向き合った。
「それでもいいのですが………損傷部分を修復するとそこの部分に負荷がかかってしまい、もしかしたら車いす生活になってしまう可能性があります」
車いす…。
「別にそれでもいいです」
「彩月…」
「私は、どんなになっても晴くん達といられたらそれでいいんです」
はっきりと、自分の気持ちを伝える。
「分かりました、善処いたします」
先生にも伝わったみたいだった。
では、費用の方にも目を通しておいてください、と紙を置いて頭を下げ出ていく。
「お兄ちゃん、協力してほしいことがあるの…」
私に今出来ることを。

