「何言って、」

唖然とする晴くん。

「橘くんの親はそんなに優しくなかったですもんね」

「知ってますか?橘くんは親に捨てられたんです それを拾ったのが私です」

「橘くんはかわいそうな子ですよ 六歳にして、親の借金を押し付けられて両親は逃げましたからねぇ」

「橘くんは借金を払うためにモデルをしていたんです、私がマネージャーをしてね」

「それを橘くんは逃げたんですよ、逃げられると思いますか?」


「橘くん、親の借金、まだ200万円弱残ってますよ?」



悪魔のように微笑む。
晴くんを誘い出そうてしているのだろうか。
なんで、そんな最低なことしか出来ないの。


「借金を私が払わなくなったら橘くんが払う羽目になりますけど、あてがあるんですか?」

「…っ」

拳を握りしめる晴くん。

晴くんはまだ高校生だ。
200万円弱なんて払えるわけがない。


「そんな借金を残したまま、彩月さんたちの元に残るのですか?」

「うるさい……」

「私たちを逃がして、一緒に来たら今まで通り払いますよ」

「黙れ!」


晴くんが私の手を握ったまま、言葉を紡ぐ。


「俺は別に借金まみれでもいい なんとかして払っていくからさ」

「それでも、彩月たちと一緒にいたいんだよねぇ」

「また、捨てられたらそれまでだ」

「それまでは、別に少しずつでも返していく」

晴くんがしゃがんで、握っていない方の手を伸ばす。
手を取ればゆっくりと立たせてくれる。


「彩月のそばにいるって、約束したからさぁ」



「そんなんで、そばにいれるとでも、」


「その気持ちが聞けたら十分だ」


お父さんが前に出る。


「俺達が借金を全額払おう」
それでいいな、雪乃、とお母さんにもら同意を求める。
頷くお母さん。

「なっ…」

「え……、」


「それでも足りないのなら300万円払おう」

「ぐっ…!」

すると、やっとサイレンの音が聞こえる。
きっと警察が来たんだろう。

長く感じた。
だけど、警察を呼んでから数分しか経っていない。
一つ一つの動作が一瞬だった。