全ての記憶を《写真》に込めて




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いつも通り彩月を迎えに行ってから学校へ向かおうと思ったが、先に連絡があった。


【体調が優れないので休みます、先に行っててください】


「はぁ?体調くずしたのぉ?」

まぁ、別に心配ってわけじゃないけどぉ。
いや、嘘心配。

前に言われた言葉がが気にかかる。

しかも、文が妙に丁寧すぎる。


「あいつだったら、無理してでも来る気がするんだよねぇ」
それくらい無茶しそうなやつなんだけどなぁ、と不思議に思いながらも、まぁメールが来たんだし、と自身を納得させる。


この時、ちゃんと様子を見に行っておけばよかった。





放課後。
やっぱり気になったから、寄ってみることにした。
向かってる途中。


「あ、晴電話なってんじゃね」
「あ、ほんとだ」
表示されているのは『嘉月さん』。

「もしもし…」
『なぁ、彩月いる?』
「今はいませんけど…」
『家みてきてくれるか?母さんが昨日電話したらちょっとおかしかったらしいから』
「今日も朝メールで体調悪いってメール来たんですよねぇ」
今から向かいます、と伝える。
『なんか、すごく嫌な予感するから、早く、頼んだぞ!』
「え、ちょっ」
急に切れた。
嫌な予感って。
俺だって、嫌な予感してるし…。

「翔、ちょっと急いだ方がいいかも…」
「え、わ、和久井くん!?」
「茉莉ちゃん、急ぐぜ」

あいつの家に急ぐ。
何も無いことを祈って。


でも、そんな祈りは虚しく。





_______________ガチャ。



「鍵、開いてる…」
「彩月、入るからねぇ!」

玄関においてある靴。
嫌ってほど見たことがある。



急いであいつの部屋へ。




勢いよく扉を開ける。

「晴っ!!」

目の前を、何かがかすった。
翔が後に引いてくれなければ…。

「やっぱり来るんですね」
やっぱり、って気づいてたんじゃん。
しかも、今度会うのは違うところのはずだったのにさ。
「そんなことどうでもいいからさぁ、彩月に手を出してないよね」


フードをとる目の前のこいつは春馬。

扉の向こうには蹲っている彩月。

「彩月!!和久井くん、警察…っ」

「あ、警察呼んだら彩月さん、死んじゃいますよ」
私は殺したくないんですけど、と部屋をのぞき込む。

「あんたの目的って、俺を連れ戻すことじゃないの?何でこんなことに彩月に手出してんの」

「橘くんに目をつける前から、彩月さんには目をつけてましたよ」
表情を一切変えずに微笑みながら語るそいつ。

「初めてあったのは五年前くらいですかね、私が21歳で、彩月さんが11歳です」
それから中学の時にまた会いましたよ、と。


「じゃあ、贈り物とかって……」
翔が口を開く。

「もちろん、私です」

「何でこんなことすんの、意味わかんないんだけど」

すると、きょとんとした顔になる。

「なぜ?だって綺麗なものは手元に置いておきたいでしょう」

「それは、橘くんも同じです」

「ですが、今の橘くんは私の理想とは違います 人形に心なんていりません」

「私と一緒に来てくれますか?」

勧誘するように、手を差し出す。


二度と、あんたのところなんかに戻るか…っ。ふざけるなよ…。


そう言いたい衝動を抑える。


「まずは、彩月に会わせてよ 絶対に警察は呼ばないからさ」


「まぁ、橘くんの頼みなら仕方ありません」


俺だけ、部屋に入る。


「あんた、彩月にまだ何もやってないよねぇ」

「本当はそのまま襲ってあげても良かったんですよ、昔みたいに」
ただ、それだと橘くんが嫌がるでしょう、と俺のことを分かったかのように話すこいつが鬱陶しい。

「昔みたいって、どういう、」

「昔会ったことあるって言ったでしょう だけど、彼女は覚えてませんよ」

「は?」

「あの時は中途半端で終わってしまったんですよね あぁ、安心してくださいね、橘くんの彼女だと知ったので手は出していませんよ」

あの時。
いつだよ。
中途半端って…。

「彩月、起きなよ もう大丈夫だからねぇ」

揺さぶってみる。
反応はない。

「彩月!!起きて!」
桜庭も扉の向こう側で声を荒らげる。

「ほら、みんなあんたの心配してんだからさ」

いいから、目を覚ましてよねぇ。
まだ温かい。
生きてるでしょ。


春馬を睨む。

しかし、やれやれ、と言ったような表情で。
「一度目を覚ましたんですけどね、もう一人の方と交代している間にまた意識を失ってましたよ、なので私は何もしてません」

「もう一人って誰」

「今はいません」

話を聞くに、もう一人の方が春馬よりも暴力的だと思う。
だったら、こいつだけの時に彩月を連れて逃げた方が…っ。


「…ぅっ………」

「彩月!起きたの…っ、早く起きな!」

「…ぅ、あ………は、るくん」

「そう、俺が分かるねぇ」

「頭、痛い……」

ぐったりとした様子の彩月。
嘉月さんが言ってたのはこのことか?

「起きれる?何されたか言える?」

「ぇ……っ」

なにかに怯えている彩月。
下を向いてしまう。

「どうしたの?」

「ダメだよ、逃げて、晴くん……っ」

「え、」

お願いだから…、と泣き出す彩月。




「なぁ、キリュウ、なんで子供入れてんだ?」


「あ、マダラメが帰ってきましたね」
「子供いれんなよ、警察なんか呼ばれたら俺の計画台無しじゃん」

入ってきたのは、若い男。


「すみません、橘くんのお願いだったので」
「あぁ、例のね」

例のって何。

「で、お前は紘平の娘を助けに来たのか、残念だなぁ、こいつは人質だ」
「ふざけたこと言わないでよねぇ、彩月はオレが助ける 絶対にね」
オレがダメになっても、翔も桜庭もいる。
翔に関してはオレよりも体格がいいからなんとか出来る可能性が高い。
……何も持ってなければなんだけどねぇ。

「あぁ…、そういうのイラつくんだよ、娘の方もそうだった」
まぁ、殴ったらすぐ意識飛ばしたけどなぁ!と愉快そうに語る。

は?

殴った?


「…………なよ」

「あ?聞こえねぇな」

「ふざけんなよ」


人を人形みたいに、物みたいに、自分のいいように扱うやつは嫌いだけどさ。
それ以上に他人の不幸を笑うやつが嫌い。


「お前、許さねぇからな」