全ての記憶を《写真》に込めて

そのままの状態で何分だっただろうか。
あるいは何時間だっただろうか。

男は家を出て言った。

どうしよう。
どうやったら逃げれるんだろう。


_______________プルルル、プルルル。



私の携帯、置いていったんだ。

画面を見れば、『お母さん』の文字。


腕が後ろで縛られてて、取れない。
でも、なんとか出来るかも、しれない…。

後ろ向きで操作すれば……。



「何しているんですか?」

「っ!」

男の人が帰ってきていた。

「全く、電話くらい言ってくれたらさせてあげますよ」

え、

「あぁ、助けなんて呼んだらご両親と二度と会えませんね」

「わ、わかった 何も、変な事言わない、から」





「もしもし」
声が震える。
男のナイフが視界に映る。
『もうっ、彩月から電話するって言ったじゃない』
「ごめんね、寝ちゃってたの…」
『そうなの?体調悪いとかじゃないのね』
「うん」
『どうしたの?元気ないけど』
「な、何でもないよ!ちょっと疲れてるみたい…」
『そう…もうすぐ一時だものね じゃあ、もう寝た方がいいわね また明日』
おやすみなさい、といって切れる。

「助けを呼ぶのかと思ってたんですけどね」

まだ、死にたくない。
晴くんともまだ一緒にいたい。
茉莉ちゃんと翔くんともお出かけの約束がある。
お兄ちゃんとは頑張るって決めたから。


「まぁ、殺しませんよ 今からがお楽しみなんです」


ゆっくり近づいてくる。
先程のように頬を触れるのではない。
そのまま、床に寝かされる。

「や、やめ……っ!」

「なんで足は縛らなかったか分かります?」

「…っ」


この人、知ってる。
この感触知ってる。


「とりあえず、寝ておいてください」


そして、横腹に何かを押し付けられる。
そこから強い痛み。

そのまま閉じていく意識の中で、目を凝らして顔を見る。
懸命な努力も虚しくフードの影で見えない。


そして、暗闇へ落ちていった。