晴くんに手を引かれて走った。


手を、にぎ、えっ!


「は、晴くん!?」


それかどれくらい走ったのだろう。


保健室の前まで来てやっと止まった。


「はぁ、ここまで来ればいいでしょ………、て、あんた顔真っ赤だけど」
と、と言った瞬間、晴くんも頬を赤らめる。


「ご、ごめん!」


手を握っていることを思い出したみたいだ。
いや、普通に触れるくらいなら良いんだけど。
普通に、握られてた、から。


「…え、えっとどうして走ったの…?」

お互い落ち着いてから、口を開く。

「別に、アリスの話ってウサギがアリスを連れていく話じゃないの?」
「え、」
それで走ったの?

「…ふふっ、ふふふっ」
「ちょっ、何」
「いや、晴くんの行動が可愛くて……っ」

連れていったつもりだったんだ。
急に走って言ってびっくりしたけど、晴くんにも晴くんの考えがあったんだね。


「可愛いとか初めて言われたんだけどぉ」
「え、そうなの?」
「いつも綺麗とか、カッコいいばっかりだったからさ」
「あー、そっか……モデルさんは綺麗じゃないとねって言ってたもんね」
「覚えてたんだ」

私自身別に記憶力が無いわけじゃないから。

あと、なんか、


「晴くんとの思い出は、取っておきたい、から」
ダメ、かな、と聞いてみる。

「…っダメじゃ、ない」


夢の中でも晴くんは言ってくれた。
思い出はもう一度作ればいいって。


だけど、今の思い出も大切にしたい。