全ての記憶を《写真》に込めて

茉莉ちゃんが赤組の男の人と接戦だ。
次は晴くん。
少し前にも走ったばかりだけど大丈夫だろうか。
「そう言えば、彩月ちゃんは晴くんが元々何部だったか知ってるか?」
「え、部活やってたの?」
「中学生の頃な」
「何やってたの?」
「あいつは、」
翔くんは晴くんを見つめた。


「和久井くん!」
「はい、お疲れさまぁ」

さっきは気づかなかった。
晴くんが慣れた手つきでバトンを受け取って、走る。
滑らかに。

「あいつは、もともと陸上部のエースだったんだぜ」
少し前に走ったばかりなのに、今走るのが初めてかのような動き。
まるで体力を残していたかのような。
そして、綺麗な髪が太陽の光を受けてキラキラと輝いている。
それと同時に、走っている時の晴くんの表情は凄くいいもので。

「かっこいい………」

本心からそう思った。
「まぁ、あいつはモデルと両立してたからあんま部活参加してねぇけど」
才能だか、とレンズ越しを見て笑う翔くん。

そっか、モデルをやってたから今も部活に参加してないのか。
でも、意外だな。
暑いのが苦手で、走るのが嫌いそうな晴くんが陸上部だったなんて。


そして、赤組を引き離して勝利。
「は、晴くん!凄いよ!かっこよかったよ!」
「疲れたんだけど………、まぁ、当然の結果だよねぇ」
満足げに笑う晴くん。