Complex Prince ~僕は王子様なんかじゃないのに~

―――僕は王子様なんかじゃないのに。


童話に出てくるような、恐怖心を捨て去り猛獣に立ち向かい、攫われたお姫様を救い出せるような度胸も力もない。それに、村人達の先頭にたって、知恵を絞り行動するような知的で勇ましい騎士ではない。

実際の僕は、一匹のゴキブリを見て失神したこともある。それに、犬に吠えられて腰を抜かしたこともある。ホラー映画もまともに見れないどころか、予告編だけでも怖くて夜も眠れなくなる。深夜に一人でお手洗にすら行けず、いつも誰かに着いてきてもらうほどの情けない男こそが本当の姿だ。

以前、母に「人を見かけだけで判断をしてはいけない。」と教えられたが、この言葉をそのまま女性達にも伝えたい。僕は王子様なんかじゃないと、見かけだけで僕のことを判断しないで欲しいと。


「そ、そのっ、ぼぼっ僕は、貴女が思っているような王子様なんかじゃ・・・」

「あたし、本当に貴方が好き。だからもう、抑えきれないの。」


蚊の鳴くような声で女性に伝えた僕の言葉は、うっとりとした女性の耳にはもう入らない。

背後には本棚がある、目の前には頬を赤らめて僕へと迫る女性がいる。第二図書室から脱出する扉はたった一つしかなく、女性から逃げる術はない。扉から一番離れた所まで追い込まれてしまった僕は、本当に運がない。

どうすれば女性から逃げられる?助けを呼ぶとしても、人気のない北校舎に誰も訪れるはずがない。話が通じない女性を説得することも不可能に近いだろう。

頭は既にパニック状態で、何も考えられず真っ白になりそうだったが、どうにかして女性から逃れる方法を探していると、ふと頭に考えがよぎった。