Complex Prince ~僕は王子様なんかじゃないのに~

「はじめて陽翔くんを見たときから大好きなの、あなたはあたしの王子様なの。」


何度も聞き覚えのある台詞を恥ずかしそうに言葉にすると、ぷるっとした唇を開き、僕に伝えた女性は頬を赤らめて俯いた。

うっとりとした女性がその後も何度か僕に言葉を投げかけるが、恐怖で埋め尽くされる僕には一言も届いていなかった。

僕がこれほどまでに女性から好意を持たれることをトラウマに感じているのは、幼少期の頃からである。

自分で言うのも気恥しいが、眉目秀麗、頭脳明晰、運動神経抜群で、何をするにも一つ頭が抜き出ていた僕はいつも注目の的だった。

バレンタインデーには、大袋三つ分ほどのチョコレートを毎年貰ったことがある。毎日のように女子から呼び出され、告白をされたこともある。ファンクラブの女子達に家まで後を付けられたこともある。

しかし、それは同級生に限らず、一回り離れた年齢の女性からも同様であった。女性恐怖症になった第一の原因は、電車に乗ると何度も女性から痴漢をされ、誘拐をされそうになったことである。


「一目惚れだった、童話から出てきた王子様が現れたと思ったの。そういうの信じてなかったけど、陽翔くんと出会って変わったの。」


彼女と同様に、いつも女性達は口を揃えて、僕を王子様と呼ぶ。まるで、童話や漫画からでてきた王子様だと、私の運命の人は僕であると、頬を赤らめて僕の耳元でそっと呟くのだ。