「さーてもうひと頑張りしましょうかね」

光希さんの掛け声に私達も思い腰を上げた時だった


ppppp ppppp

フロントの電話が鳴り響いた
内線と外線で音が少し変わっているからこれが内線だとすぐに分かった


「はい、こちらフロントでございます」


光希さんが電話にでる

「…はい、申し訳ございません。只今確認致します」

失礼しますと言って電話を切る

「どうしたの?」

「んー302のお客様だったんだけどね?隣がうるさいから注意してくれって」

「隣って303の部屋ですか?」

「うん、そうみたい」

どうやらクレームの電話だったらしい

「とにかく303に電話入れてみるわね」

しかし電話を3回かけても出る様子がない


「部屋まで行くしかないわね」

「ならうちらもついて行くよー変なやつだったら怖いし、それに今掃除もないからね」

美雪ちゃんの提案に私も賛成した


表から部屋を開ける場合私たちが持っている鍵かフロントの機械でしか部屋の鍵は開けられないようになっている

光希さんが鍵を開けチャイムを鳴らす

ピンポーン





「出て…こないね?」

少し待ってみたが開く様子はない
しかし中に人が居る気配はする

「すみません、フロントです 」

そう呼びかけるも応答は無い


「おかしいわね、開けてみましょうか」

光希さんがそっとドアノブを回し扉を少し開けた



ダンッ!!!


「「キャア!」」


その瞬間ドアの隙間から青白い手が私たちに向かって伸びてきた

間一髪の所で私達は下がり光希さんがドアを抑えてくれていたおかげで出てくることは無かった

「よ、酔っ払いにしてもたちが悪すぎますよ!警察呼びますけど?!」

興奮した様子の美雪ちゃんがそう声をかける

しかし

ドンッドンッドンッ

体をドアに叩きつけ手は隙間からこちらに伸ばし今にも押し開けて出てきてしまいそうだ

光希さんの表情も歪む

慌てて私も美雪ちゃんもドアを押す

ガンッガンッガンッ

ドアの隙間から伸びた手が私たちを掴もうと表から叩き空を切る


「ちょっと、ホントに何なのよ!!」

光希さんの口調も荒くなる

「まゆちー、鍵!鍵閉めて!」

美雪ちゃんが一生懸命手をドアの中に押し入れその間に鍵を閉めろと言うのだ

「わ、分かった!」

慌てて鍵を取り出しインターホンの横の鍵穴に通そうとするが震えでなかなか刺さらない

「キャアッ!!!!」

美雪ちゃんの叫び声にそちらをみると

ドアの隙間から伸びた手が美雪ちゃんの手を掴み中に引きずり込もうとしていた


「はーなせ!!!!」


壁に足をつき掴まれた左手の反対の手で一生懸命引きはがす

その間も光希さんはドアを押し閉めている

ガンッ!

美雪ちゃんの手が離されたその一瞬にドアを思い切り閉めた

「か、鍵!」

ガチャン


何とか鍵をかけれた


「良かった…何なのほんとに 」

半泣きの、いや、もう泣いている美雪ちゃんの左手は掴まれた跡が残っていた