バタバタと部屋を掃除しては出て掃除しては出ての繰り返しをひたすら続けながらもやっとお昼の休憩を取ることが出来た


「やっとごはんだーーーー」

美雪ちゃんはそそくさとフロントに戻ると自分のロッカーから某弁当屋さんのお弁当を取り出して電子レンジに突っ込んだ

「お腹すいたわねー」

光希さんも美雪ちゃんに続いてロッカーから自分でいつも作っているらしいお弁当箱を取り出した

いつ見ても彩も味も栄養バランスも良いお弁当を作ってくる

その点私は菓子パンやコンビニ弁当、給料日前なんてお金ないから前の日に割引されたお惣菜なんかになってしまうこともある

そして今日は給料日の五日前、例に漏れず割引されたお惣菜が私のロッカーから出てくるのだ


「まゆちゃんたら自分で作れば安上がりなのに」

光希さん、そう言われてもですね

「朝ギリギリまで寝ていたくて…」

そう言って苦笑いする私に軽く呆れ顔の光希さん

チンと同時に美雪ちゃんはレンジから弁当を取り出した

「いただきまーす」

そう言って席に座った

「まゆちゃん先にどうぞ?」

光希さんはポケットからいつものように煙草を取り出すと窓の近くに寄った

「先に使いますね」

自分の惣菜を温め終え光希さんのお弁当をレンジに入れる

「あっためときますね」

「ありがとう」

ニコリとこちらに視線をやりながら煙を吐き出す光希さんはとても絵になっている

場所がここじゃなければなー

なんて考えながら私も美雪ちゃんの隣に座った


テレビをポケーっと見つめながら食べていると温め終えた光希さんも私たちの前に座った


「最近物騒な事件が多いわよねー」

美味しそうな卵焼きを一口サイズに切り分けてから口に入れる光希さん

食べ方まで綺麗だなぁ…


「なんか通り魔多いみたいだよね」

もう殆ど食べ終えている美雪ちゃん
細いのに凄い食べっぷりにはもうだいぶ慣れた

「通り魔ねぇ、まゆちゃんたちも気おつけるのよ?」

いやいや、私より光希さんですよ
なんて思っていたがふと思い出した

光希さんって男だったなと

合気道や拳法を学生の頃習っていたとか

想像つかないけれど格好良かっただろうなと言うことは安易に想像がついた


それから和気藹々と食事を済ませそれぞれ休息を一時までとる

美雪ちゃんはmy枕をロッカーから取り出して眠りについている

光希さんは窓辺で煙草を吸いながら携帯を煽っている


私は特に何も無いからただテレビを眺めていた


『続いてはこちら…』

おじさまなアナウンサーの隣にたたずむ女性アナウンサー

白のブラウスを着ていて黒の髪を綺麗に一つにまとめた人

しかし何故か先程から一切顔を上げない

ゆらりゆらりと微かに動いて見えた
それに気づいていないおじ様はフリップを見せながら説明している

場面がフリップに行く

それから次のコーナーに移る為にまた一旦おじさまが写った

「次は天気予報、新川くー…ぅっア」



っ?!


天気予報の映像が流れる

今のは何だった?


天気予報士の新川さんへとおじさまが呼びかけをしようとしたその時

先程まで下を向いて揺れていた女性アナウンサーがいきなりおじさまに飛びかかったのだ

その形相はもうこの世のものとは思えない程に青白く血管が浮かび上がり黒目が白く濁っていた

そしておじさまの首元を噛み付いていたように見えた


それから天気予報が行われCMが入り

そしてスタジオにカメラが戻った時には
若い男性アナウンサーが持っている台本らしい紙を震える手で握りながら話し出した


『えー、私天音達彦さんの代わりを務めさせていただきます、三浦と申します。よろしくお願い致します』


天音さんの件については一切触れずそのまま番組は進行されて行った


「なんだったの?」



背中を登ってくるような寒気が走った。