いつものように裏口から部屋に入る

「じゃあやりましょうか」

気持ちを切り替えて部屋のゴミをとり、シーツを剥いでいく。

「ベッド張るわよー」

「はーい」


別との横に向かい合う様に立ちシーツを順番に張っていく

慣れるまではこれが難しかったのに今では簡単に思える

「お風呂は私がやるわね」

「お願いしまーす」

光希さんにお風呂を頼み私は部屋の机や棚、床を拭いた

アメニティなんかを補充してトイレをチェックし終えた時丁度光希さんもお風呂掃除が終わった

「よし、下に、」


ギャ"ァ"ーーーーーーー


「な、なに?」

外から男の叫び声が聞こえた
慌てて表の扉から外の様子を見る

「まゆちゃん、危ないから私が見るわ」

そう言って外に出た

「下から、でした?」

「多分…」

そっと階段から3階に降りる
3階の扉は開いていたためそれはすぐに目に入った


303の部屋の扉は開いていた

その部屋の前には2人の警察官が血まみれで倒れ込んでた


「だ、大丈夫ですか?!」

走って寄っていくと微かに息のある警察官が

「に、に…げ………て………ッ」


「えっ?」


そのままパタリと私に向かって伸びていた手が落ちた


「きっ救急車!」

そう言って光希さんが慌てて携帯をとりだす

その手は震えてなかなか番号が押せていない
何とか番号を押し電話をかけた

私は電話を光希さんに任せ部屋の中の様子を見ることにした


開けられた扉は殴ったのかぼこぼこと穴が空いている

壁もあちこち引っ掻かれるような傷があった

後ろで光希さんが危ないからと声をかけてきているが電話応対の為追っては来ない

ゆっくりとベッドのある部屋に入る

部屋の中は酷い有様だった

シーツや布団、枕があちらこちらに投げ捨てられ

食事したであろうゴミも散乱していた

「なにこれ…」

あまりの汚さに少し寒気を感じた

机に近づいてみると

「これ…」


「どうしたの?」

びっくりして後ろを振り返ると電話が終わったのであろう光希さんが立っていた

「びっくりした、救急車どうでした?」

「すぐくるわ、サイレンの音が聞こえたら外に出てきてって言われたわ」

そうですかと返事をして私がさっき見つけたものを手渡した

「これ、注射器?と、なんかの薬?」

「そうです、朝掃除した部屋にもこんな注射器が落ちてたんですけど…」

朝美雪ちゃんと話をした時のことを思い出した

「なるほどね、酔っ払いってわけじゃなかったのね…」




っ!!!!


「光希さん後っ!!!!」

私の声で咄嗟に後ろを振り向く光希さん


「な、なんなのよ!」


それは先程扉の前で倒れていた警察官が立ち上がりこちらにゆらりと体を向け歩み寄って来るところだった


「な、…」

私と光希さんは言葉もなくその様子を見つめていた

その警察官は右側の首と肩にかけての肉が無く、首が左に傾きその口はだらし無く開いていた

白く濁った目が先程の男と被る


「あ、あの、だだ大丈夫で、すか?」

あ"あ"ぁ"…

と、低い声と言うより唸り声のようなものをあげてこちらに少しずつ近ずいてくる


「ま、まゆちゃん!逃げるわよ!」


そう言って私の右手に握り左手で枕を持つ


「あいつがこの部屋まで入ってきたらこれを投げるからその隙に扉から逃げるわよ」

小声で指示を出す

私も理解したと言う意味を込めて頷く

5m、4m、3m、…今よ!っと声と同時に枕が警察官の頭に直撃した

勢いよく投げられた枕に頭から倒れていった

それを視界の端に捉えながら廊下に飛びだした

「とにかくフロントに戻りましょう」

美雪ちゃんも心配だったため一旦フロントに戻ることにした