「あー今日も暇だねー」


テレビの天気予報士のお姉さんの爽やかさに見合わない暑さは私の心もやる気もとかし去っていくようだった

「まゆちゃん、女の子でしょ!足を閉じなさい」


この人はここHOTELグルージュの清掃員の今野 光希さん25歳
私の1年先輩になる。

男性だが私なんかよりも断然女性だ


私はここで働いて約半年になる至って普通の冴えない19歳

高校を卒業してもなかなか就職先が決まらず未だにバイトの日々

でも何だかんだこの職場を気に入っているのは光希さん他10名近くいるがみんな和気あいあいと働ける職場だからだろう


今日は光希さんと千葉さんの3人体制

千葉さんは36歳には見えない若々しい主婦のベテランさん

グラージュにはもう5年勤めているらしい

物腰も優しく頼りになる先輩である。




「千葉さーん、そろそろお茶にしましょ。今日はケーキかってきたの」

ふふっと笑う光希さんの手には有名なケーキ屋さんの箱があった

「あらーみっちゃんいつもありがとう。私は紅茶入れるわねー」

なんとも間延びしたような千葉さんの呑気な声に私も自然と頬が緩む


「私それめっちゃ食べたかったんです」

「でしょう?アタシもずっと気になってたの。1時間並んで買ってきちゃった」

ご機嫌そうに鼻歌を歌って千葉さんが紅茶を入れて持ってきてくれた

「1時間も?それはご苦労様です」

そういって私と光希さんの前に紅茶を置いて自分の分も取り席についた


「「いただきまーーす」」


ぱくりとイチゴの乗ったショートケーキを口に頬張る


「んーーーーーおいし」

語尾にハートが付きそうな光希さん

「ほーんとおいひーわー」

ほっぺを触りぽわーっと別世界に旅立つ千葉さん

「ほんと、甘さ控えめで美味しいです」

私も人のこと言えないくらいに顔が緩みっぱなしで

終いには光希さんに顔酷いと笑われてしまった


3人でそんな優雅な一時を過してまた仕事に取り掛かる


バタバタと忙しなく部屋を片付けていく

グラージュはラブホテル

いろんなお客様の来るところ

たまに見たくもないものを見ることもあるが何だかんだいつも楽しく毎日を過ごしている


でもたまに思うことがあった



ーーーーー何かつまんないな