「お帰りなさいませ、彩葉様。今日も随分と賑やかですね」

「賢木っ!」


ちょうどいいタイミングで賢木もやって来て、私は思わず賢木に駆け寄る。



やった、賢木が来てくれれば百人力だ。




賢木はにこりと私に一度微笑むと、未だに火花が散る2人の間に割り込み制止した。



「これから彩葉様は英会話がございます。三芳様は客間でお待ちを。椎名は彩葉様をレッスン室までご案内したのち、扉の前で待機していなさい」


的確な指示を出す賢木はもう流石としか言いようがない。



私の信頼できる第二のお兄ちゃんだ。




「…かしこまりました」

「賢木さんに言われたら仕方ないなぁ」


2人も賢木の言葉には素直に従う。



私の制止は効かなかったことが少し悔しいけど、とりあえずその場はおさまった。





「彩葉様もご苦労されますね」

「そう言う賢木は何だか楽しそうね」

「えぇ。男って不器用ですから」

「へ?」



首を傾げる私と、やっぱり楽しそうな賢木。



結局賢木の言葉の意味が理解できないまま、私は李樹と一緒に英会話のレッスン室へ向かった。