────コンコン、


「失礼します。お呼びですか?お嬢様」


扉のノック音が聞こえて、すぐに扉が開いた。

李樹も、私『専属』のボディガード。


その肩書きで今現在で私の部屋に許可なく入れる使用人は賢木と李樹しかいない。




「うん、こっちに来て」


やっと来た李樹を、私はベッドのそばまで呼んだ。


初めて会った時は愛想もなく第一印象はあまり良くはなかった李樹だけど、今となっては賢木と同じくらい信用できる存在。



「少し寝るわ。だから、そばにいてちょうだい」


そう言って手を差し出した私に、李樹は驚いた表情を浮かべた。



「手、握っててよ。いつもみたいに」


余裕そうに見せているけれど、李樹はきっと知らない。


私の心臓がいまどれだけドキドキうるさいか、わからないでしょう?

学校で恋人役をすることがどれだけ嬉しいかも、李樹は知らないでしょう?


李樹にとっては、恋人役の方が守りやすいという理由以外に他ならない。

そんなことは分かっていても、私にとっては守られるためだけに李樹といるわけではないんだ。