てっきり賢木だと思っていた私はその人物を見て目を丸くした。




「彩葉ちゃん」

「な、んで…」



そこにいたのは、紛れもなく今日来る予定のなかった三芳くん。




そんな彼の登場に驚いたけど、今の自分の状況を思い出してハッとした。


こんな泣き顔で、床に座り込むだなんてみっともない格好。




「…ごめん、今日は帰って」


なんでこんな遅い時間にうちへ来たのかも疑問だったけど、それを聞く以前に私はこんな姿を誰にも見られたくなかった。



慌てて立ち上がって顔を隠すように背中を向ける。




そのまま三芳くんの気配が消えるのを待ったのに。


「こんなに泣いてる女の子を放っては置けないでしょ」



それどころか彼は、そう言って私に寄って来た。




ポン、と頭の上に手を乗せられ撫でられる。



「やっぱりバカだよ、彩葉ちゃん」

「…っ」



三芳くんの言葉で、折角抑えていた涙もまた溢れ出してしまった。