「はぁー。疲れた〜」


それから1時間もすれば、私が分からなかった分野は綺麗に消えることに成功。




「ありがとう、李樹」

「どういたしまして」



時間はとっくに22時を過ぎていて、そろそろ寝る支度をしなくてはいけない頃になっていた。




「久しぶりに李樹と一緒にいれたなぁ。最近ずっと三芳くんがいたから」


勉強道具を片付けながら、何となくポロっと口に出る。




本当に李樹との家での時間は久しぶりだったから、自分が思ってる以上にそれが嬉しかったんだ。きっと。



三芳くんが転校して来てからというもの、李樹と2人になることはなかったから。




「………」


そんな浮かれている私でも、李樹の表情が浮かなくなった事に気付いてしまった。




「…彩葉」

「ん?」



そして、私を呼ぶ。




家で李樹から声をかけてくるなんて珍しい。



手を止めて李樹へ顔を向ければ、どこか真剣な瞳が私を捉えていた。





「俺、邪魔じゃないか?」

「……え?」



そして、口にしたのはそんな事。



ドクン、と、心臓が嫌な音を立てる。



今さっきまで楽しかったはずの時間が、一気に辛いものへと変わってしまいそうな予感がした。