「ま、別に俺は彩葉ちゃんが誰を好きであろうといいけどね。結婚さえしてくれれば」



目の前ではそうニコリと笑う三芳くんがいる。


遊んではいるけど、三芳くんはやっぱり恋愛には冷静らしい。



彼の中では結婚と恋愛は別、ということなんだろう。





そう頭の中で理解しながら、私はさっきから三芳くんの表情が気になって仕方がなかった。




「とりあえず婚約者の恋愛事情把握しておきたかっただけだから。学校でも恋人ごっこは続けてていいよ」

「…あのさ、」

「ん?」


たまらなくなって、話を切り出す。




「バカにしたいなら、していいよ」

「…え?」


私がそう言うと、三芳くんは一瞬驚いたように目を見開いた。



けど、また笑って「何のこと?」と首を傾げる。




…さっきからずっと同じ笑顔なことに私が気付いてないとでも思ってるんだろうか。




「私ね、こう見えてもお嬢様なの」

「え、うん。分かってるけど」

「分かってないよ。私にだって目の前の人が嘘ついてるかどうかくらい見分けがつくよ?」

「っ!」



そう口にした瞬間、今度こそ三芳くんの顔から笑みが消えた。