「ま、とにかく。俺は彩葉ちゃんに認めてもらわないといけないみたいだね」



パッと李樹からも離れれば、三芳くんの目は私を捉える。




「警戒する彩葉ちゃんもそそられるけど、やっぱり笑って欲しいから」

「なっ、」

「ハハッ、じゃあまた来るね」



ポン、と1回私の頭を撫でれば、彼は颯爽と帰って行ってしまった。





シンと静まり返る部屋の中には、私と李樹の2人きり。




「…彼には気をつけて下さいね」


ポツリと、李樹はそう言った。




「え?」

「お嬢様は隙が多すぎますので」



私の方を一切見ず、李樹はティーセットを軽く片付ける。




それが終われば「お部屋に戻りましょう」と私を部屋まで送ってくれた。





「李樹」

「お嬢様、ここでその呼び方は…」

「李樹っ」


部屋の前まで来て、私は彼の名前を呼ぶ。




普段は椎名と呼ぶ私も、今はどうしても李樹と呼びたかった。