「そうか。なら問題はないだろう?」

「っ、でも!」

「もし彼が彩葉にとって不釣り合い極まりない男であったなら、その時は婚約の話を白紙に戻すと約束しよう。な?彩葉」




父様の真剣な目が私を捉える。


父様が私のことを想ってくれてるのがよく分かるからこそ、私はこれ以上断り続けられない。



「…分かりました」

「っ、」


一瞬、横にいる李樹が息を飲んだ気がした。





「話は以上だ。賢木、お前には婚約者の対応を任せるよ」

「承知しました」


「椎名、お前は彼と学校でも一緒だ。武術は心得てるらしいがお前ほどではない。何かあればお前が守れ」

「…かしこまりました」




「下がっていいわよ」と母様が言う。



私達3人は、そのまま書斎を後にした。






『お前は、今好きな男でもいるのか?』



少し。ほんの少しだけ、後悔を残して。






***




「転校生を紹介するぞー」



次の日。


案の定うちのクラスに転校生がやってくると担任から紹介があった。