「私、婚約者だなんて聞いてないよ!それにそんな勝手に決められても…」


その隙に、自分の言葉を繋げた。




婚約者なんて欲しくない。いらない。



私が好きなのは、李樹なのに…っ。




力が入ってしまい、手のひらに自分の爪が少し食い込む。





「彩葉」

「…はい」


父様に名前を呼ばれ、反射的に背を伸ばした。



こう言う時の父様に私は勝てない。





「お前は、今好きな男でもいるのか?」

「え…」


何を聞かれるかと思えば、父様からの質問はそれだった。




「い…ません」



どうしても、それを言った時に李樹の顔は見れなかった。


見てしまったら、好きが隠し通せなくなるから。



けど、李樹が好きだとバレれば、きっと李樹は私のボディーガードから外されるだろう。


それだけは嫌だ。



父様に李樹への気持ちがバレるくらいなら、嘘をついてでも私は李樹にそばにいてほしいと思ってしまう。