"仕事"
そう、李樹の中で私の存在はただ守る対象にしか過ぎないんだ。
こんなに恥ずかしくてドキドキしてても、そう思ってるのは私だけ。
李樹は、私を恋愛対象としては絶対に見てくれない。
だから私は。
「もういいから。手を離して」
「だから、それは無───」
「───椎名」
「っ!」
この想いを、無くさなきゃいけない。
私の呼び方が変わったことに李樹はすぐに気がついた。
李樹に繋がれた右手が熱い。
「離しなさい。命令よ」
「…かしこまりました」
このままだと、ドキドキしてしまうから。
離れた右手は、風が当たってひんやりと冷たくなった。