「…っ、大丈夫」



ぎゅっと目を瞑り、子猫を抱き寄せる。




手が後ろ手に縛られていなかったことが唯一の救いだったかもしれない。



この子を、抱いてあげることができるから。






「っ、ケホッケホッ……」



煙が中まで進入してきた。



できるだけ吸わないように、子猫と一緒に身を低くしてゆっくりと息をする。






─────李樹…!



大好きな彼の名前を、必死に呼んだ。





助けて、李樹。




早く、助けに来てよ。







──────バン…ッ!!


「お嬢様っ!!」






大きな扉が開いたのは、そんな時だった。







「ケホッ…、り、き…」



煙で霞む視界の中、真っ直ぐのその影は私のところまでやって来る。





「お嬢様…っ、ご無事で…!?」

「無事、なわけないでしょ…バカ」



李樹のこんなに慌てた顔は見たことがないかもしれない。




李樹が来てくれなことに安堵しながら、私は李樹に抱えられてその建物から逃げ去った。