「な…っ!」

「おっさん。その左ポケットに入ってるの何?」


鋭く睨んで、ギリギリと掴んだ手首への力を強める。




彩葉が不思議そうな顔をする中、俺はとりあえず彼女を後ろへ下げた。


おかげで両手が空く。



─────グイ…ッ!


「い、いたたたたっ」



両手首を捻りあげ近くにあった電柱へ顔を押しつければ、そいつは悲痛な声をあげた。




「彩葉、警備隊呼んで」

「え、あ、うん!」


朝の登校時間でのこの騒ぎ。


道行く人たちに注目を浴びてしまったが、これは "たまたま不審者を見つけた" で誤魔化せそうだ。



数分後、皆月の警備隊が駆け付けて、その男は連行されていった。