「そんなに見ても何も面白くないですよ」
周りを見渡しすぎたのか、李樹の呆れ声が聞こえてくる。
それですらこんなにドキドキしてしまうんだから不思議だ。
「ねぇ、李樹」
「…なんでしょう」
椎名から李樹へ呼び方を変える。
それだけで次に何を言われるか理解したらしい李樹は、眉をひそめた。
そんなに嫌がられても私は引かないよ。
「名前で呼んで?」
「敬語は、」
「禁止」
にっこり笑う私と、はぁとため息を吐く李樹。
「分かったよ、彩葉」
「ふふっ」
なんだかんだで今日は受け入れが早いらしく、笑みが零れた。



