「やめてよ、それ」
「……」
そう言ったところで、李樹が変わるなんてことがあるわけもなく。
「お部屋に戻りましょう?お嬢様」
「…そうね」
李樹は、素早く切り替えをして私を部屋まで送って行った。
「ねぇ、李樹」
「何でしょう?」
李樹が部屋を出て行く直前、私は彼を呼び止める。
ダメ元だと分かっていても、どうしても聞かずにはいられなかった。
「兄様と何してたの?」
「いずれお話します」
また、それだ。
私がそう聞くたび、李樹はいずれ話すと答える。
『あと少しだけ、待ってて欲しい』
それは、あの日の言葉と何か関係があるんだろうか。
そう聞こうとしたところで答えてくれないと分かっていたから、わざわざそれは聞かなかった。