けど、それからの李樹の切り替えはあっという間で。




「そろそろ戻りましょうか、お嬢様。お身体が冷えてしまいます」

「う、うん」




口調も全て戻ってしまった李樹は、エスコートするかのように私に手を差し伸べる。


素直に手を取った私は、心の隅でボディーガードなのにそんな振る舞いがすんなり出来てしまう李樹に感心していた。




「あ、そんなところにいたんだね、彩葉ちゃん。椎名クンも一緒か」



会場に戻れば、私を探していたらしい三芳くんがやってくる。


私達の繋がれた手を見た瞬間、三芳くんは怪訝な表情を浮かべた。




「…おいで、彩葉ちゃん」


────グイッ

「きゃっ、」



そして気付けば腰を抱き寄せられ、李樹との手が離れてしまう。


三芳くんに抱き寄せられたドキドキよりも、李樹との手が離れた寂しさの方が勝ってしまう私はどうしようもないくらい李樹が好きで。



「そんな怖い顔しないでよ、ボディーガードくん。彼女は俺の婚約者だよ?」

「そんなの近いうちに崩れますよ。そしたら、もう一生お嬢様には触れないでくださいね?」




不敵に笑った李樹に、どうしようもなくドキドキしてしまっていた。