「さて、椎名」

「…はい」

「場所、変えようか?」


そう言って微笑む彼が何の話をするのかは予想が付くが、その予想が外れていることを願いたい。



俺は司様の自室に上がらせてもらった。




「椎名は、彩葉が好きか?」

「…はっ…?」


椅子に座って開口一番、その言葉が飛んでくる。



これにはさすがに驚いて素の声が出てしまったが、司様は「楽にしていいよ」と笑った。




「婚約者の話をしたとき、彩葉も椎名も顔をしかめてたな。当事者自身の彩葉がしかめる理由は分かる。が、"ボディーガード" がしかめることは普通はない」

「………」

「あるとすればその婚約者に敵対心を持ってる場合、だな」




別に司様の口調はきついものではない。


どちらかと言えば穏やかすぎるくらいだ。



だからなんだろうか。




「…はぁ〜……。怖いですね、その着眼点」

「クスッ、これでも次期当主なんでね」



少しだけ、本音が漏れてしまった。