私のその決定的な一言に、李樹は私の手を握った。
「それと、」
「……まだ何か」
それだけに飽き足らない私は、さらにお願いを重ねる。
怪訝な顔をした李樹は、私が次になにを言うかは大体わかっただろう。
「敬語とお嬢様呼び。やめてね」
「………」
「李樹」
「……はぁ。分かったよ」
この会話ももう何度目だろうか。
私がここまでして押さないと、李樹は首を縦には振らない。
どうせ目が覚めたら、また敬語も呼び方も元に戻るんだろうけど。
「賢木が呼びに来たら戻っていいからね」
「ん。分かったよ」
学校の時とは違って、どこか堅苦しい会話。
それでも、私は李樹に「お嬢様」とは呼ばれたくなかった。
「おやすみ、李樹」
「あぁ。おやすみ……彩葉」
ベッドの端に腰掛け私の手を握る李樹に、私は心の中で「大好き」と呟いた。



