「ね、李樹」

「…なんでしょう」


半ばやけくそでその名前を呼んだ。




本当、李樹の考えてることはよく分からない。


次に紡ぐ言葉を言ったら、李樹はどんな反応をしてくれるんだろうか。




「さっきね、風都くんにキスされてプロポーズされたの」

「…ッ、」



こんな事言うなんて私もどうかしてる。


それでも、李樹がどういう反応をしてくれるのかが知りたかった。



キス、なんて言っても髪にだったし、『風都くん』だなんて呼んだこともないのに。





「結婚、した方がいいと思う?」



じっと目を見つめて問う。



お願い、李樹。私の期待する答えであって。






─────それでも神様は、李樹は、私の望む言葉をくれない。




「お嬢様が幸せであれば、俺は止めませんよ」

「…ばか」


李樹は、本当にずるい人だ。




「じゃあ…結婚しようかな?」

「…、」


李樹の息を飲む音が聞こえたのはきっと私の都合のいい幻聴だよね。