佐田は未成年だった。19歳。今年20歳。



今年20歳になるからと言って、私には何の慰めにもならない。今年30歳を迎える法律的にも、肉体的にも、立派な大人が、10年の歳月の中でどこかに置き忘れてしまった精神的な幼稚さと甘さで、お酒を呑むことを許してしまっている。



でも、佐田は未成年には見えなかった。私より年下であることは服装なり、肌の艶なりで想像はできたけど、まさか……。



そして、佐田の幼少期のことまで知ってしまった。ただ、未成年だということ、その未成年に酔っていたとはいえ、結婚の約束をしてしまったことで、あまり頭に入って来なかった。



地元青森で、そこそこいい偏差値の高校を卒業後、山のように積まれた専門学校のパンフレットの中、目をつぶって適当に選んだ鍼灸師の専門学校へ行くために上京。東京に来て一年が経つということは、何とか入ってきた。



「シンキュウシってどういうこと勉強するの?」



「鍼の勉強ですよ。」



あ、うん。それは知ってる。鍼灸師がどういう仕事かも知ってるつもり。私が訊きたいのはそこじゃないんだよね……。どういうカリキュラムで、どういうことを学んでるか。そういうことを訊きたいんだよね……。



「例えば、同級生に鍼刺したりするの?」



「あー、全然普通にしますよ。」



「全然普通に」って……。どっちか一つでもわかりそうなものを、二つも使っちゃってさ。まるで、剣一本で勝てないから二本使っちゃえみたいな考え。