その日の夕方

「おいキー坊」

店に駐在さんがやってきた。

「なななな、何。

俺、何にもしてないよ」

身に覚えは無いが、喜一は体を強張らせた。

「はは、お前に用はねぇよ。親父さんいるかい?」

今日の親父は人気物だ。

「夜まで戻らないけど、親父がどーしたの?」

喜一の声に、

「そうか、困ったな。

たぶんお前さんちの落とし物だと思って持ってきたんだけどよ、確認の使用がねぇな」

髭をさすりながら駐在さんが荷車で運ばせた物は、昼にきた客の持ち物だった。

持ち物だけじゃない。服、靴、帽子全てだった。

「こんな骨董品扱ってるのなんて、お前さん家ぐらいだろう?

でも、落とし物としては不自然でな。

カバンの中だけじゃなく、服の中にまでパンパンに骨董品が詰まっててよ。帽子の中にまでだぜ?」

喜一はごくりとつばを飲んだ。