小学校に上がる前の夏のこと。

俺は相変わらず一人で遊んでいたが、やはり飽きてしまっていつもは行かなかった山の方へ行ってみることにした。

祖母や親に、

「山の方は危ないから言っちゃダメ」

と言われていて、それまで行かなかったのだが、退屈にはかなわなかった。

家から歩いて歩いて山の中に入ると、ちょっとひんやりしていて薄暗く、怖い感じがした。

それでもさらに歩いていこうとすると、声をかけられた。

「一人で行っちゃだめだよ」

いつから居たのか、少し進んだ山道の脇に、僕と同じくらいの背丈で、髪を適当に伸ばした女の子が立っていた。

その子は着物姿で、幼心に変わった子だなと思った。

「なんで駄目なの?」

「危ないからだよ。

山の中は一人で行っちゃ駄目だよ。

帰らなきゃ」

「嫌だよ。せっかくここまで来たんだもん。
戻ってもつまらないし」

俺はその子が止めるのを無視していこうとしたが、通りすぎようとしたときに手をつかまれてしまった。

その子の手は妙に冷たかった。