好きの海に溺れそう

「悠麗なら言いそう…」

「あたし、冗談なんかじゃないって言ったの。悠麗がずっと好きだったって…。そしたら真面目な顔で『考えられない、ごめん』って言われた…」



泣くのを必死にこらえてる玖麗。



心なしか唇が少し震えてる。



「泣いていいんだよ。あたしの前なんだから」



そう言ったら、玖麗はあたしに抱きついて泣いた。



悠麗の気持ちも少しはわかる。



きっと、自分のことでいっぱいいっぱいになって、玖麗を気遣う余裕がなかったんだ…。



結局、玖麗は当たり前だけど私の家には戻ってこなかった。



一人で家に帰ったあたし。



海琉は、玖麗が戻ってこないことについてなにも言わなかった。



ただ一言、笑顔で「おかえり」と言うだけ。



その気遣いがありがたい…。



リビングには、少し気まずそうに悠麗が座ってる。



「玖麗から…聞いたのか?」



立ってるあたしを、上目使いがちに見てくる悠麗。



遠慮と気まずさが見て取れる視線だ。



「聞いたよ」

「そうか…」



また沈黙。



海琉がテーブルの上に料理を並べてくれる。



おいしそうな匂い。



海琉の料理は暖かい匂いがする。



「海琉食べないの?」



二人分しか置かれないお皿を見て、あたしが言う。



「俺は洗い物とかあるし、あとでいいよ」



海琉が手を横に振って言った。



気遣ってくれてる…。



海琉がキッチンに戻った。



「何も…言わねえの?」



悠麗があたしに言った。



あたしは「いただきます」と言ってお箸でサラダを自分のお皿に盛りながら答えた。



「言わない。あんた達の問題にあたしが口出せないよ」

「玖麗は…本気なのか…?」

「本気じゃなかったらあの子がそんなこと言うはずないでしょ」