好きの海に溺れそう

まあそりゃそうだよね…。



「杏光は知ってたんだよね?」

「まあ知ったの割と最近だけどね…。産まれたときから好きだったのをずっと隠してたみたいだし…」



産まれたときから…。



それもびっくりだな…。



「悠麗と二人にして大丈夫だったかな…?」

「変なことになってなきゃいいけどね…」



そんなことを話しながら着いた家。



「ただいま!」



家のドアを開けると誰もいない。



不思議に思って、杏光が悠麗の部屋をノックすると、中から悠麗が返事した。



「玖麗は?」



ドア越しに悠麗に聞く。



「…帰った」

「え?なんで?」

「…」



何があったんだろう…。



何度聞いても悠麗は答えない。



「海琉…」



杏光が心配そうな顔で俺を見た。



「あたし…玖麗のとこ行ってくる…」



人のことを気遣える杏光の優しさ。



俺は、そんな杏光に微笑んだ。



「じゃあ俺はごはん作ってるね?」



俺がそう言うと、杏光は切なそうに笑った。



「うん…本当にありがとう」

「玖麗の分も作った方がいいかな?」

「うん、一応…お願い…」

「わかった。気をつけて行ってきて」



杏光が家を出て行った。



さてと、俺は晩ご飯の準備。



買った物を冷蔵庫に入れつつ、ご飯を炊く。



肉じゃがにしようと思ったけど、みんないつ食べるかわからないからカレーにしちゃおう。



味噌汁用に買った豆腐とほうれん草は、肉じゃが用のにんじんを少し借りて白和えにした。