好きの海に溺れそう

日も短くなっていて、薄暗い中伸びる二つの影。



手が二人の影を同化させる。



近所のスーパーまで来た。



安売りしてた挽肉とにんじん、ほうれん草、その他色々を買い物かごに入れる。



「杏光、アイス食べる?」

「食べるっ!」



アイスも4人分。



棒のアイス2本とカップのアイス2つ。



かごの物を全部レジに持って行ってお会計した。



スーパーでやっているキャンペーンのシールをもらうと、かわいいと喜んだ杏光が自分のスマホに貼ってる。



レジ袋を持つ手とは反対側の手で、杏光の手を握った。



前は手繋ぐのも恥ずかしがってたけど、最近は慣れてきたな。



「あ、海琉。公園寄ってこ」



杏光の言葉に、二人で公園に入った。



小学生がブランコで遊んでいる。



二人でベンチに座って、買った棒のアイスの袋をあけた。



「なーんか、平和だねえ」



杏光がアイスを食べながらしみじみと言った。



本当に平和…。



なんだかこのまま寝れそうだ…。



アイスが半分以上なくなった頃、小学生が帰っていった。



「なつかしーい!」



杏光がそう言いながらブランコにかけて行った。



アイスを口に入れながらブランコの立ちこぎをはじめる。



「杏光、危ないから棒口に入れながらブランコしないで」

「はーい…。海琉親みたい」



だって心配じゃん…。



杏光がしぶしぶブランコに座って静かに漕ぎはじめた。



俺も隣のブランコに座ってゆっくりと漕ぐ。



二つのずれたブランコの音が小さな公園に響いた。



すっかり暗くなって、アイスもとっくに食べ終わってから家までの道を歩く。



「それにしても、玖麗が悠麗を好きってすっごく驚いたんだけど…」

「あたしも初めて聞いたとき、本当に驚いたよ…」



杏光がそう言って、「まあ、あたしが海琉を好きって言ったとき、玖麗も相当驚いてたけど…」と付け足した。