好きの海に溺れそう

「海琉って、前好きだった人…どうなの?」



前に聞いたときは、よくわからないって言ってたけど、もう完全に消えたのかな…。



「前に好きだった人…? …あっ」

「…」

「杏光のことずっと考えてたらいつの間にか忘れてた」



笑顔で言う海琉。



あ、何か超…安心したかも…。



「てか…いつの間にかみんないなくなってるよ?」

「え? あ…ほんとだ。あたしも帰んなきゃ」



海琉の家を出たら、徒歩2秒で当たり前のようにすぐある私の家。



別れるの寂しい…。



なんとなく繋いでる手はやっぱり私から。



いつか海琉から繋がせてやる…。



「帰りたくないね」



口からぽつんと言葉が出た。



「ね」



でもだめだ。帰らなきゃ。



「ぎゅー」



海琉を、潰れるくらい強く抱きしめた。



好き、好き、好き…。



とにかく伝わるように抱きしめる。



最後に一瞬チュッとキスをして、「じゃあね!」と家に入った。



次の日から、学校は一緒。



手をつないだら海琉が照れた。



「ねえ、みんな見てるよ…?」

「気のせいだよ気のせい」

「そうかな…」



でも確かに見られている気がしないでもない。



まあいいや、見せつけよう。



学校に着いてお互いクラスに行くと、やっぱり気のせいじゃなくて見られていたらしい。



なぜか噂が広まっていた。