好きの海に溺れそう

「あれ? 杏光ちゃん?」

「おはようございます」



席に着いてすぐに霜さんがやってきた。



あたしの目の前が霜さんの定位置。



霜さんはそこに座った。



「やった! スクランブルエッグ! いただきます!」

「杏光ちゃん、そういえば海琉は?」

「知らないよあんなん。第一なんなの? 今更避け出すとか。あたしの気持ちもてあそんでるの?」



この間は、久しぶりに海琉と話せたって思って幸せいっぱいだったのに。



あたしが好きって知ってるのにあの態度?



告白したのは間違いじゃないって思ったのに。



これでも海琉のことをまだ好きな自分が悔しい。



あたしがグチグチ文句を言ってると、ぽかんと口を開けてる霜月夫妻。



「あ…んみつちゃん、海琉のこと好き…なの?」

「え? …あ」



そうじゃん! この2人海琉の親だよ!



まあ隠したいというわけでもない。バレるならバレても構わない。



「そうです、好きなんです」

「本当に!? なあに、すごく嬉しい!」



ほら。こういう人たちだっていうのはよく知ってる。



昔からあたし達に結婚したいなんて言ってたし。



だけど最近では諦めたのか、そういうことは言わなくなった。



「海琉に、2人にそのこと言ったって言わないでね?」

「言わない! ねえ、告白したって本当なの?」

「うん、本当。海琉はあたしのこと好きじゃないって知ってるから言い逃げしたけど」

「こんな可愛い杏光ちゃんほっとくなんて信じられない!」

「だよね! あたしも信じられない!」



でも、海琉の方こそ、あたしが海琉を好きだなんてきっと信じられないだろう。



だけど多分、必死に信じようとしてくれてる…。



幼なじみの立場を手放さなきゃいけなかったのは多分、海琉にとって苦しいことだった。



本当に、あたし達は家族みたいだったから。



逆の立場ならあたしも苦しい。