好きの海に溺れそう

一通り遊んでから、日夏と夜ごはんを食べて家路についた。



ん? 待って…。



家の前まで来たのはいいけど、今日は家に誰もいない日だ…。



そして私は今日、鍵を持ってきてない…。



家入れないじゃん!!



どうしよう…。



こういうときは海琉の家だ。



今までなにも気にせず海琉の家にはしょっちゅうお泊まりしてた。



でも、いいのかな…。



今さらになって躊躇してしまう自分がいる。



やっぱり海琉が男だっていうのを少し意識してるんだ。



それでもあたしは他にもどうすることもできないから、海琉の家に泊まるしかない…。



マンションに住んでいるあたし達。



私のすぐ隣の家が海琉の家だ。



ドキドキしながらインターホンを押した。



「はーい」



海琉のお母さんである雛子(ヒナコ)さんが出てきた。



海琉に似ている、若くて可愛いお母さん。



「杏光ちゃん? どうしたの?」



事情を説明した。



雛子さんはニコニコしてる。



「泊まってって?」

「ありがとうございます!」



家にあげてもらうと、海琉がリビングでテレビを見てた。



「海琉、杏光ちゃん」



雛子さんがそう言うと、海琉はこっちを見た。



目が合う。



なぜか物凄く恥ずかしくなって、目をそらした。



「どうしたの?」



キョトンとした顔で海琉が言った。